鉄輪
てつりん
名詞
標準
文例 · 用例
神職 鏡――うむ、鉄輪――うむ、蝋燭――化粧道具、紅、白粉。
— 泉鏡花 『多神教』 青空文庫
髪を捌かせ、鉄輪を頭に、九つか、七つか、蝋燭を燃して、めらめらと、蛇の舌の如く頂かせろ。
— 泉鏡花 『多神教』 青空文庫
白くして悩める眼鏡橋のうへを鉄輪を走らしつつ外科医院の児は過ぎゆき、気の狂ひたる助祭は言葉なく歩み来る。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
世を畏れぬ鉄輪をごとりと転す。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
おまけにその頃の人力車の輪は、ガラガラと鳴る重い鉄輪だったのである。
— 新美南吉 『おじいさんのランプ』 青空文庫
「ハハァ、鉄輪の俥があった頃の趣味だね」と法水は初めて朔郎に声を掛けた。
— 小栗虫太郎 『後光殺人事件』 青空文庫
やがて母と兄は下に待っている俥に乗って、楼前から右の方へ鉄輪の音を鳴らして去った。
— 夏目漱石 『行人』 青空文庫
彼が山高帽子を被り袴の股立ちを執つて物凄い勢ひでペタルを踏みながら街道にさしかゝると、その砂塵を巻く鉄輪の騒音は、凡そ、一町の距離からでも聞きとれる程の花々しさで、人々はそれ自転車が現れた、とばかりにとるものもとり敢へず戸外へ走り出て、文明の利器の快適さに舌を巻いた。
— 牧野信一 『写真に添えて』 青空文庫