結
けつ
名詞
標準
文例 · 用例
糟谷が上京以来たえず同情を寄せて、ねんごろまじわってきた、当区の畜産家西田という人が、糟谷の現状を見るにしのびないで、ついに自分の手近に越さしたのであるが、糟谷が十年|住んでおった、新小川町のとにかく中流の住宅をいでて、家賃十円といういまの家へ移ってきたについては、一|場の悲劇があった結果である。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
糟谷はこのあいだに、三|里塚の一|富農の長女と結婚した。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
細君の里方では、糟谷をえらい人と思いこみ、なお出世する人と信じて、この結婚を名誉と感じてむすめをとつがし、糟谷のほうでもただ良家の女ということがありがたくて、むぞうさにこの結婚は成立した。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
精神上からみると、まことに無意味な浅薄な結婚であったけれど、世間の目から羨望の中心となり、一|時近郷の話題の花であった。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
結婚当時からのことをいろいろ回想してみると、妻に対しての気のどくな心持ち、しゅうとしゅうとめに対して面目ない心持ち、いちいち自分をくるしめるのである。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
糟谷はまた自分の結婚するについてもその当時あまりに思慮のなかったことをいまさらのごとく悔いた。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
恋愛などということただただばかげてるとばかり思っていたが、恋愛のとぼしい結婚はじつにばかげておった。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
ばかげているというよりも、いまはそのあさはかな結婚のために、たまらないいやなくるしみをせねばならぬことになった。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫