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落窪

おちくぼ
名詞
1
標準
文例 · 用例
これについての私の調査はまだ極めて不完全であるが、私が気づいた例の中最も古いのは『落窪物語』の文であって、同書には「面白の駒」と渾名せられた兵部少輔について、「首いと長うて顔つき駒のやうにて鼻のいらゝぎたる事かぎりなし。
橋本進吉 駒のいななき 青空文庫
すなわち池田亀鑑氏の調査によれば、ここの本文が「ひゝ」とあるのは上田秋成の校本だけであって、中村秋香の『落窪物語大成』には「ひう」とあり、伝|真淵自筆本には「ひと」とあり、更に九条家旧蔵本、真淵校本、千蔭校本その他の諸本には皆「いう」となっている。
橋本進吉 駒のいななき 青空文庫
江戸時代に入って、鹿野武左衛門の『鹿の巻筆』(巻三、第三話)に、堺町の芝居で馬の脚になった男が贔屓の歓呼に答えて「いゝん/\と云ながらぶたいうちをはねまわつた」とあるが、この「いゝん」は『落窪物語』の「いう」と通ずるもので、馬の嘶きを「イ」で写す伝統が元禄の頃までも絶えなかったことを示す適例である。
橋本進吉 駒のいななき 青空文庫
こういう意味において、源氏物語や落窪物語のようなものは、中等学校の歴史教科書よりも、文化国の大新聞の記事よりも、はるかに忠実な記録であり実証的な資料として役立つものである。
寺田寅彦 科学と文学 青空文庫
四十 と見れば白髪を振乱し、頤細って痩せさらぼい、年紀六十に余るのが、肉の落窪んだ胸に骨のあらわれたのを掻いはだけて、細帯ばかり、跣足でしかも眼が血走り、薪雑木を引掴んで、飛出したと思うと突然、「火事だ、」と叫んで、軍鶏を打とうとしたが、打外した。
泉鏡花 三枚続 青空文庫
」と家令を先に敷居越し、恐る恐る襖を開きて、御容顔を見奉れば、徹夜の御目落窪みて、御衣服は泥まぶれ、激しき御怒の気色|顕れたり。
泉鏡花 貧民倶楽部 青空文庫
鳥打の廂から、落窪んだ目ばかりがぎろりと薄気味わるく光っていた。
徳田秋声 あらくれ 青空文庫
髯の延びた長い顎の、目の落窪んだ川西の顔が、お島の目には狂気じみて見えた。
徳田秋声 あらくれ 青空文庫