家並
いえなみ
名詞
標準
文例 · 用例
そして或る人は荒寥とした極光地方で、孤独のぺんぎん鳥のやうにして暮してゐるし、或る人は都会の家並の混んでる中で、賭博場や、洗濯屋や、きたない酒場や理髪店のごちやごちやしてゐる路地を求めて、毎日用もないのにぶらついてゐる。
— 萩原朔太郎 『散文詩集『田舎の時計 他十二篇』』 青空文庫
町の両側には、家並の低い貧しい家が、暗く戸を閉して眠っている。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
伊太利のナポリ辺へ行くと、市街の家並が不均斉で、登つたり降りたり、中庭を突つ切つたり、路地から路地へ曲つたりする迷路のやうな市街が多いといふことを聞いてゐるせいか、伊香保の町の裏通りを歩くと、何となく南欧の田舎町といふ感じがする。
— 萩原朔太郎 『石段上りの街』 青空文庫
三日、庚辰、晴、辰刻、将軍家並びに尼御台所、二所に御進発、相州、武州、修理亮以下扈従すと云々。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
卅日、甲辰、永福寺に始めて舎利会を行はる、尼御台所、将軍家並びに御台所御出、法会の次第、舞楽已下美を尽し、善を尽す。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
洋画家並びに図案家としての津田君は既に世間に知られている。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
すつかり葉をふるひ落した裸のポプラ並木、からからに凍りついた歩道、明りを消し、二重窓を降して冷たい沈默を包んでゐる煉瓦や石造りの暗い家並、毎日毎夜の不安な空氣に脅かされてゐる町は、朝から曇つたままに暮れ落ちた暗澹たる夜空の下に、わけても眞夜中過ぎのその夜は、人通さへ稀に無氣味な程に鎭まり返つてゐた。
— 南部修太郎 『ハルピンの一夜』 青空文庫
両隣は引手茶屋で、それは既に、先刻中引けが過ぎる頃、伸上って蔀を下ろしたり、仲の町の前後を見て戸を閉めたり、揃って、家並は残らず音も無いこの夜更の空を、地に引く腰張の暗い板となった。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫