運び出し
はこびだし
名詞
標準
文例 · 用例
彼は、三人のあとから、山の根の運び出した薪を散り/\に放り出してある畠のところまでついて来た。
— 黒島傳治 『鍬と鎌の五月』 青空文庫
そこでその子供の助手が、アセチレン燈を四つ運び出して、鏡の前にならべ、水を入れて火をつけました。
— 宮沢賢治 『毒蛾』 青空文庫
いや、どうも御退屈で……」 その話の終るのを待っていたように、老婢は膳を運び出して来て、わたしの前に鰻めしが置かれた。
— 正雪の絵馬 『半七捕物帳』 青空文庫
ともかくも品川へ行って見よう」 こう思い直して、かれは更に爪先を南に向けると、この頃の空の癖で、時雨を運び出しそうな薄暗い雲が彼の頭の上にひろがって来た。
— 鷹のゆくえ 『半七捕物帳』 青空文庫
その間に、棚や、戸棚や抽出しから、調理に使いそうな道具と、薬味容れを、おずおず運び出しては台俎板の上に並べていたお千代は、並び終えても動かない料理教師の姿に少し不安になった。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
埃及のカタコンブから掘出した死蝋であるのか、西蔵の洞窟から運び出した乾酪の屍体であるのか、永くいのちの息吹きを絶った一つの物質である。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
彼女は男が、娘や私たちを認めて、歩を運び出した刹那に、「あたし――」といって、かなりあらわに体を慄わして、私の肩に掴った。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
それらからかの女の魅気は、それを運び出したこっちの衷情を無意識のうちにも取り食って自分のいのちの滋養にしてしまう作用をした。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫