唐糸
からいと
名詞
標準
China-made thread or yarn
文例 · 用例
…… 隣郷津軽の唐糸の前に恥ぢずや。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
あわれな声で、青葉しげれる桜井の、里のわたりの夕まぐれ、 と廊下で繃帯を巻きながら、唐糸の響くように、四五人で交る交る低唱していた、看護婦たちの声が、フト途切れたトタンに。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
又囚人を籠るにも用ひし迚大塔の宮を始め景清唐糸等が古跡あり」(下略) 紀州東牟婁郡に矢倉明神の社多し。
— 南方熊楠 『人柱の話』 青空文庫
唐糸草紙に唐糸の前頼朝を刺んとして捕はれ石牢に入れられたとあれば、谷倉よりは岩倉の方が正義かも知れぬ。
— 南方熊楠 『人柱の話』 青空文庫
景清や唐糸がヤグラに因はれたとあるより早計にも二物を混じて、二重櫓の下には因はれ居た罪人の骸骨が今度出たなど斷定する人もあらうかと豫め辯じ置く。
— 南方熊楠 『人柱の話』 青空文庫
すすきの萎えた穂と唐糸草の実つきと、残りの赤い色を細かにつけた水引草と、それに刺なしひいらぎの白い花を極めてあっさりと低くあしらったものである。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
それがたしか明治二十九年ぐらいを境にして、それ以来国内ではぱたっと棉を作らなくなり、唐糸が急激に入って来たのである。
— 柳田国男 『故郷七十年』 青空文庫
織物にするには、繊維の長い唐糸(外来綿糸)の方がより適しているので、日本棉は年々減ってきたのである。
— 柳田国男 『故郷七十年』 青空文庫
作例 · 標準
歴史資料によれば、遣唐使が持ち帰った鮮やかな唐糸は、当時の貴族たちの間で最高級の献上品として重宝された。
伝統的な西陣織のなかでも、特に繊細な光沢を放つこの帯は、選び抜かれた唐糸を贅沢に用いて織り上げられている。
能の演目『唐糸』では、鎌倉時代の女性の情念と、美しくも儚い絹糸のイメージが重なり合い、観客を幽玄の世界へと誘う。
博物館に展示されている古代の刺繍裂を詳しく調査したところ、芯材には国産の麻糸が、表面の装飾には渡来の唐糸が使われていることが判明した。