薄原
すすきはら
名詞
標準
文例 · 用例
婦人の意地と、張とのために、勉めて忍びし鬱憤の、幾十倍の勢をもって今満身の血を炙るにぞ、面は蒼ざめ紅の唇|白歯にくいしばりて、ほとんどその身を忘るる折から、見遣る彼方の薄原より丈高き人物|顕れたり。
— 泉鏡花 『琵琶伝』 青空文庫
) 坂を上って、アノ薄原を潜るのに、見得もなく引提げていた、――重箱の――その紫包を白い手で、羅の袖へ抱え直して、片手を半開きの扉へかける、と厳重に出来たの、何の。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
」 やがて平野橋、一本二本蘆の中に交ったのが次第に洲崎のこの辺土手は一面の薄原、穂の中から二十日近くの月を遠く沖合の空に眺めて、潮が高いから、人家の座敷下の手すりとすれずれの処をゆらりと漕いだ、河岸についてるのは川蒸汽で縦に七|艘ばかり。
— 泉鏡花 『葛飾砂子』 青空文庫
やや光の増し来れる半輪の月を背に、黒き姿して薪をば小脇にかかえ、崖よりぬッくと出でて、薄原に顕れしは、まためぐりあいたるよ、かの山番の爺なりき。
— 泉鏡花 『清心庵』 青空文庫
農家まで戻りて、小憩して歸路に就きしが、老人は、さきの薄原に閉口して、『別路を取らむ』といふ。
— 大町桂月 『赤城山』 青空文庫
六番の右は薄原に侍が一人馬の口を取つて牽いて居る処である。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
この画も薄のほかに木も堤も何もないので、かつその薄が下の方を少しあけて上の方は画けるだけつめてかいてあるので、薄原が広さうにも見え、凄さうにも見え、爪先上りになつて居るやうにも見える。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
人界の竜か、みみずか、行者の着る白衣を着ている机竜之助が、密林の細径を出でて薄原の大見晴らしの真中に立っています。
— 禹門三級の巻 『大菩薩峠』 青空文庫