塗り立て
ぬりたて
名詞
標準
文例 · 用例
え、船長も物好きじゃねえかなあ、いくらお正月だって室蘭でマストのペンキ塗りなんざ、万寿丸の船長でなきゃ考え出せねえ名案だぜ」西沢がガタガタ震えながらそれでも、早く降りたいばかりに、盲目が杖を振り回しでもするようにむやみに塗り立てた。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
馬の横腹から頬の辺まで、雨上がりの泥濘がべっとりついて塗り立ての泥壁を見るようである。
— 寺田寅彦 『断片(1)』 青空文庫
青味がかったペンキを塗り立ててあった。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
鰭は神女の裳のように胴を包んでたゆたい、体色は塗り立てのような鮮かな五彩を粧い、別けて必要なのは西班牙の舞妓のボエールのような斑黒点がコケティッシュな間隔で振り撒かれなければならなかった。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
バラックだが、安っぽい荒削の木材の生なましさや、俗々しいペンキ塗り立ての感じはなく、この界隈では垢抜けした装飾の店だった。
— 織田作之助 『夜光虫』 青空文庫
」「いいえ、はじめてです」 顔のオデキをかくそうとしてベタベタと塗り立てたのか、おかしい位こってりと厚化粧した女は、安白粉の匂いをプンプンさせながら、小沢の傍に掛けると、「――おビール持って来まひょか」 大阪弁を使っているが、アクセントは上方のそれではなかった。
— 織田作之助 『夜光虫』 青空文庫
朱や緑で塗り立てたジャンクがたくさんに通る。
— 寺田寅彦 『旅日記から(明治四十二年)』 青空文庫
惨めな礦夫の生活をかいたもの、北海道の終身刑囚の脱獄、金龍館で、一時あれほど盛っていた歌劇団の没落と俳優たちや周囲の不良群の運命、等々――そのなかでも、離散した歌劇団の歌手たちに絡んだ、頽廃的な浅草の雰囲気を濃い絵具で塗り立てた作品の、呼吸の荒々しさと脈搏の強さには、庸三もすっかり参ってしまった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫