笊蕎麦
ざるそば
名詞
標準
文例 · 用例
おなまめだんぶつ、座敷牢だ、と火鉢の前に縮まって、下げ煙管の投首が、ある時悪心増長して、鉄瓶を引外ずし、沸立った湯を流へあけて、溝の湯気の消えぬ間に、笊蕎麦で一杯を極めた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
「へえ御待遠さま、たんと御覧遊ばせ」と細君が鋏を主人に渡す時に、勝手から御三が御客さまの御誂が参りましたと、二個の笊蕎麦を座敷へ持って来る。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
「笊蕎麦」というのは、通常のところにはなく、竹あみの一枚笊へ盛って出すので、海苔なんかかかっているものではなかったのです。
— 村井政善 『蕎麦の味と食い方問題』 青空文庫
これはもっともな説で、他の飲食物の器から見ると少し高価過ぎるかたむきは本当のことで、一枚十銭の「もり」なり、十五銭の笊蕎麦の道具に一円二十銭も、少し良いものは二円近くもかけていることであるから、少し贅沢過ぎると思います。
— 村井政善 『蕎麦の味と食い方問題』 青空文庫
それにこの頃のように、善くも悪くも簡単に女の見られるカッフエなんていうものはなしさ、精々三度に一度位、毘沙門隣の春月か通寺町の更科あたりで、三銭か五銭のザルそば一つ位で人生や文学を談じては、結局さびしく帰ったものだよ。
— 加能作次郎 『早稲田神楽坂』 青空文庫
半島でもこんなおいしいザルそばが食えるものかと思ったのである。
— 佐藤垢石 『淡紫裳』 青空文庫
ザルソバやラーメンには、そういう快感は思い描くことができない。
— 坂口安吾 『明日は天気になれ』 青空文庫
満腹している時にザルソバを出されたようなもので、要するに手を動かすのが面倒くさかったのだ。
— 梅崎春生 『狂い凧』 青空文庫