餅売り
もちうり
名詞
標準
文例 · 用例
そうしたものの、しかし雇われるところといってはマラバト・ナバトの兵営建築工事か、キャビテ軍港の石炭揚げよりほかになく、日給はわずかに八十セントで、うち三十五セントの食費を差し引かれるようではお話にならず、また、比律賓人の空家にはいりこんで自炊しながらの煎餅売りも乞食めく。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
役柄の肩書が物を云ってか、千代子はもちろんのこと、傲慢にさえなった大福餅売りの町子さえ俄かに態度をかえて信頼の念を面に現わして、無礼を詫びてくれた。
— 海野十三 『深夜の市長』 青空文庫
甘い物にも、女にも飢えている足軽組の兵は、『天人が餅売りにきた』 と噪いで、『天人餅か、買ってやろう』『こっちへもくれ』 軍目付の眼をしのんで迄、争って、彼女の竹籠を軽くした。
— 吉川英治 『篝火の女』 青空文庫
『やっ、餅売りが、牛車から落ちたぞ』『病気が出たか』『抛ってゆけ』『いや、女は、かあいそうだ』 荷駄の小者が三、四人駈け戻って行って、埃の中から彼女をかつぎあげて来た。
— 吉川英治 『篝火の女』 青空文庫
「ホ、ホ、ホ、ホ、商人といえば餅売りか、そこらの呉服商が、精々みたいに考えているからだよ」 御寮人は、聞き流して、むしろ愛嬌に取っていたが、娘は、堺商人の誇りをもって、一応いって措かなければ気がすまないような容子―― その自慢ばなしに依ると。
— 円明の巻 『宮本武蔵』 青空文庫
だが、母の餅売りも、結局は無駄骨折りに終ってしまった。
— ――四半自叙伝―― 『忘れ残りの記』 青空文庫