青黴
あおかび
名詞
標準
文例 · 用例
こゝろに白けた以上に白け切って眼の裏のまぼろしに、不思議と魚の浮嚢、餅の青黴、葉裏に一ぱい生みつけた小虫の卵、というようなものが代る/\ちらちら見え出して、身慄いが細い螺旋形の針金にでもつき刺されるように肩から首筋を刺した。
— 岡本かの子 『巴里祭』 青空文庫
私は裏へ廻ると、日のささぬ軒下のじめじめした青黴に眺め入つたり、金網の中から覗いてゐる淡紅色の兎の耳の中の奇妙ないぼいぼに見入つたり、空を切つて大きく張り渡つた蜘蛛の巣の巧緻な形に驚いたり、水甕の底深く沈んでゐる鯉の美事な悠々たる鱗の端正さに、我を忘れる樂しさを感じようとした。
— 横光利一 『榛名』 青空文庫
ペニシリンだって、青黴の一種から発見されたのだ。
— 豊島与志雄 『自由人』 青空文庫
するとしまいに彼は十分にテルソン風の風味と青黴★とを帯びて来るのである。
— 上巻 『二都物語』 青空文庫
青黴 チーズなどに生ずるものをいう。
— 上巻 『二都物語』 青空文庫
梅雨から秋ぐちへかけて、それがもっともひどく、朝はやく出仕すると、敷き畳に青黴のはえていることなども、稀ではなかった。
— 山本周五郎 『山彦乙女』 青空文庫
要吉は、なめらかなりんごのはだに、あざのようにできた、ぶよぶよのきずにひょいとさわったり、美しい金色のネイブルに青かびがべっとりとついたりしたのを見るたび、まるで自分のはだが、くさっていくようないたみを感ぜずにはいられませんでした。
— 木内高音 『水菓子屋の要吉』 青空文庫
一山いくらのお皿の上には、まっ黒くなったバナナだの、青かびのはえかけたみかんだの、黒あざのできたりんごだのがのっていました。
— 木内高音 『水菓子屋の要吉』 青空文庫