寝惚け
ねぼけ
名詞
標準
文例 · 用例
三 朝霧が山村を罩めて、鶏の声が、霧の底から聞える、黄色い南瓜の花に、まだ夢が残つてゐるかして、寝惚けた姿をしだらなく大地に投げ出してゐる、ぼツと白壁が明るくなる、森がうつすらと、烟つぽい緑を、向うの山の懐に、だんだら、染めに浮かせる、起き上つて支度をする頃は、方々の家から、軽い炊煙が立ちはじめた。
— 小島烏水 『天竜川』 青空文庫
それともいくら分析してもどこまでも不飽和な寝惚けた鼠色に過ぎないだろうか。
— 寺田寅彦 『帝展を見ざるの記』 青空文庫
お春は厠に起出でつ、帰には寝惚けたる眼の戸惑ひして、彼血天井の部屋へ入りにき。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫
(何を寝惚けているんです。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
新兵衛は誰にどうして殺されたか、唯一の証人は女中のお滝であるが、彼女は十七の若い女で、寝惚けていたのと狼狽えていたのとで、もちろん詳しいことはなんにも判らなかった。
— お照の父 『半七捕物帳』 青空文庫
はいはいと寝惚け声で答えて、あたふた逸子が出て行く足音を聞きながら、鼈四郎は焜炉に炭を継ぎ足した。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
それから、火鉢の火や茶道具を運んで来た小女中が、寝惚け眼で寝具を二つ並べて敷いて去ったあと、葛岡は、自分の分の布団をぐいと片側に寄せ、わたくしの分の布団との間に畳の空地を慥えました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
試みに寝惚け眼を摩って起上った彼等のある者を掴え、「暑いのは誰でも暑いのだ。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫