藤蔓
ふじづる
名詞
標準
wisteria vine
文例 · 用例
あの谷の向う側にたしかに美しい花が咲いてゐると信じ得た人だけが、何の躊躇もなく藤蔓にすがつて向う側に渡つて行きます。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
藤蔓にすがつて谷を渡つてゐる人は、ただ向う側の花を見たいだけなのです。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
「いき」な建築は円窓と半月窓とを許し、また床柱の曲線と下地窓の竹に纏う藤蔓の彎曲とを咎めない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
鮨までなつかしくなるんだよ」 二人の坐っている病院の焼跡のひとところに支えの朽ちた藤棚があって、おどろのように藤蔓が宙から地上に這い下り、それでも蔓の尖の方には若葉を一ぱいつけ、その間から痩せたうす紫の花房が雫のように咲き垂れている。
— 岡本かの子 『鮨』 青空文庫
それから思い出したように、あの藤蔓を、また五六ぺんにちゃにちゃ噛みました。
— 宮沢賢治 『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』 青空文庫
タネリは、柔らかに噛んだ藤蔓を、いきなりぷっと吐いてしまって、こんどは力いっぱい叫びました。
— 宮沢賢治 『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』 青空文庫
そこで仕方なく、首をまげたまま、また藤蔓を一つまみとって、にちゃにちゃ噛みはじめながら、かれ草をあるいて行きました。
— 宮沢賢治 『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』 青空文庫
タネリはおもわず、やっと柔らかになりかけた藤蔓を、そこらへふっと吐いてしまって、その西風のゴスケといっしょに、大きな声で云いました。
— 宮沢賢治 『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』 青空文庫