尨犬
むくいぬ
名詞
標準
文例 · 用例
その下へはもう尨犬がやつて來てゐる。
— 梶井基次郎 『太郎と街』 青空文庫
」 赤熊のこの容態では、成程|立聴をする隠れ場所に、見世物小屋を選ばねばならなかったろう、と思うほど、薄気味の悪い、その見世物は、人間の顔の尨犬であった。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
万年町の縁の下へ引越すにも、尨犬に渡をつけんことにゃあなりませぬ。
— 泉鏡花 『註文帳』 青空文庫
」 耳を澄して、「畜生、この間もあの術で驚かしゃあがった、尨犬め、しかも真夜中だろうじゃあねえか、トントントンさ、誰方だと聞きゃあ黙然で、蒲団を引被るとトントンだ、誰方だね、黙りか、またトンか、びッくりか、トンと来るか。
— 泉鏡花 『註文帳』 青空文庫
「奥さん、あの尨犬が電車通りにおりましてすよ。
— 徳田秋声 『爛』 青空文庫
あの禿あがったような貧相らしい頸から、いつも耳までかかっている尨犬のような髪毛や赤い目、鈍くさい口の利方や、卑しげな奴隷根性などが、一緒に育って来た男であるだけに、一層醜くも蔑視ましくも思えた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
「あの一句は、ゲーテの『ファウスト』の中で、尨犬に化けたメフィストの魔力を破ろうと、あの全能博士が唱える呪文の中にある、勿論その時代を風靡した加勒底亜五芒星術の一文で、火精・水精・風精・地精の四妖に呼び掛けているんだ。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
ありがたいと思って大事にして穿かなくっちゃいけない」「だってみんなが尨犬の皮だ尨犬の皮だって揶揄うんだもの」 藤井の叔父と尨犬の皮、この二つの言葉をつなげると、結果はまた新らしいおかしみになった。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫