歯二
はに
名詞
標準
文例 · 用例
渇くのは尚ほ辛くつて、雨のない日の続く時は帆布を拡げて、夜露を受けて、皆が口をつけて吸つたんだつて――大概唇は破れて血が出て、――助かつた此の話の孫一は、余り激しく吸つたため、前歯二つ反つて居たとさ。
— 泉鏡花 『印度更紗』 青空文庫
この時厠に立って小便をしていた伊沢柏軒は、前へ倒れて、門歯二枚を朝顔に打ち附けて折った。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
(昭和11・8「サンデー毎日」)歯なしの話 七月四日、アメリカ合衆国の独立記念日、それとは何の関係もなしに、左の上の奥歯二枚が俄かに痛み出した。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
むし歯は自然に抜けたのもあり、医師の手によって抜かれたのもあり、年々に脱落して、現在あます所は上歯二枚と下歯六枚、他はことごとく入歯である。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
その上歯二枚が一度に抜けたのであるから、上頤は完全に歯なしとなって、総入歯のほかはない。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
紳士は年歯二十六七なるべく、長高く、好き程に肥えて、色は玉のやうなるに頬の辺には薄紅を帯びて、額厚く、口大きく、腮は左右に蔓りて、面積の広き顔は稍正方形を成せり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
その蛇長二十五フィート、胴の厚さ牛ほどで、頭至って厚く短きに、眼は不釣り合いに小さく輝く、鎌のごとき歯二列あり。
— 蛇に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
この蛇佐渡に最多しと聞く、河童に殺された屍は、口を開いて笑うごとく、水蛇の被害屍は歯を喰いしばり、向歯二枚欠け落ち、鼈に殺されたのは、脇腹章門辺に爪痕入れりと見え、『さへづり草』には、水辺一種の奇蛇あり、長七、八寸より二尺余に至る。
— 蛇に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫