宵々
よいよい
名詞
標準
文例 · 用例
二 金沢なる浅野川の磧は、宵々ごとに納涼の人出のために熱了せられぬ。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
さらぬも近隣の少年は、わが袖長き衣を着て、好き帯したるを疎じて、宵々には組を造りて町中を横行しつつ、我が門に集いては、軒に懸けたる提灯に礫を投じて口々に罵りぬ。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
試みにやはり『灰汁桶』の巻について点検すると、なるほど前句「摩耶」の雲に薫風を持って来た上に「かますご」を導入したのは結構であるが、彼の頭にはおそらくこの「夕飯のかますご」が膠着していてそれから六句目の自分の当番になって「宵々」の「あつ風呂」が出現した感がある。
— 寺田寅彦 『連句雑俎』 青空文庫
九月 宵々の稻妻は、火の雲の薄れ行く餘波にや、初汐の渡るなる、海の音は、夏の車の歸る波の、鼓の冴に秋は來て、松蟲鈴蟲の容も影も、刈萱に萩に歌を描く。
— 泉鏡太郎 『五月より』 青空文庫
前庭と中庭との間に突き出た比較的落着きのいい四畳半に宵々お銀の手で延べられる寝道具は、皆ふかふかした新しいものばかりであった。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
旅に出る前までは、まる三カ年間、夜ごと宵々ごとに五丁町のこうしたそぞろ歩きを欠かしたことのない主水之介でした。
— 江戸に帰った退屈男 『旗本退屈男 第九話』 青空文庫
むろん旧暦ですから今の九月ですが、宵々ごとにそろそろと虫が鳴きだして、一年十二カ月を通じ、この月ぐらい人の世が心細く、天地|蕭条として死にたくなる月というものはない。
— のろいのわら人形 『右門捕物帖』 青空文庫
山里は冬ぞ寂しさまさりける――まさかにそれほどでもないが、庭の枯れ芒が木枯らしを恐れるようになると、再びかの荒涼索莫がくり返されて、宵々ごとに一種の霜気が圧して来る。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫