滅入り込む
めいりこむ
動詞
標準
文例 · 用例
」 いつまで続く、ともうげんなりして、思慮が、ドドドと地の底へ滅入り込む、と今度は、戸棚の蔽が纏って、白い顔にはならない替りに、窓の外か、それとも内か、扉の方角ではなしに、何だか一つ、変な物音……沈んだ跫音。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
それだのに何としたか意久地なしの霊魂がまたトスカ的に滅入り込む、気が悄気る。
— 北原白秋 『桐の花』 青空文庫
そうしてフワリフワリと舞い上りつつ左手の方へ遠く遠く、小さく小さく消えて行った……と思うと又一つ同じパラソルがもとの処にホッカリと浮かみ出したが、それがだんだんと小さくなって、左手の方へ消えて行くのを見送るたんびに、私は何ともいえない、滅入り込むような恐怖を感じはじめた。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫
一息毎に刻々と気が滅入り込むのを、手をくだす術もなく見殺してゐる心で私は、ハアハアと手の平に息を吹きかけてゐた。
— 牧野信一 『毒気』 青空文庫
凧を話材にされると私の気分は滅入り込むばかりであつたにもかゝはらず――。
— 牧野信一 『鱗雲』 青空文庫
そして話がそこまで来ると、殆んど船乗りばかりのその座は、妙に白けて、皆ないやアな顔をして滅入り込むのが常だった。
— 大阪圭吉 『動かぬ鯨群』 青空文庫
単に大和の国で、私は郡も町の名も知らない、古宿の破れ二階に、独り旅の疲れた躯を据えていた、道中の様々な刺戟に頭は重くて滅入り込むよう、草鞋の紐の痕で足が痛む。
— 児玉花外 『菜の花物語』 青空文庫
自家に戻ると、日の短い最中だから、四時頃からもう暗くなったが、何をする気にもなれず、また矢張り机に凭って掌に額を支えたまゝ静としていると、段々気が滅入り込むようで、何か確乎としたものにでも執り付いていなければ、何処かへ奪われて行きそうだ。
— 近松秋江 『別れたる妻に送る手紙』 青空文庫