嵩増し
かさまし
名詞
標準
文例 · 用例
門際の流に臨むと、頃日の雨で、用水が水嵩増して溢るるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、蒼く飜って竜の躍るがごとく、茂の下を流るるさえあるに、大空から賤機山の蔭がさすので、橋を渡る時、夫人は洋傘をすぼめた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
雨に嵩増し流れたるを、平家の落人悽じき瀑と錯りけるなり。
— 泉鏡花 『逗子だより』 青空文庫
加茂川は、やや水嵩増して、ささ濁りの流勢は河原の上を八千岐に分れ下へ落ちて行く、蛇籠に阻まれる花|芥の渚の緑の色取りは昔に変りはないけれども、魚は少くなったかして、漁る子供の姿も見えない。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
いつもは俯向いて、底を見るのが、立って、伸上って見送るほど、嵩増して、薄の葉が瀬を造って、もうこれで充満と云うように、川柳が枝を上げて、あぶあぶ遣ってた。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
お話跡へ戻りまして、井生森又作は清水助右衞門の死骸を猿田船に積み、明くれば十月三日|市川口へまいりますと、水嵩増して音高く、どうどうっと水勢急でございます。
— 三遊亭圓朝 『西洋人情話英国孝子ジョージスミス之伝』 青空文庫