生世話
きぜわ
名詞
標準
文例 · 用例
しかし、そのうち水門が開かれて、滝流しの浴衣を着た与茂七が現われると、舞台は陰惨の極から、華麗の頂辺に飛び上り、まさに南北特有の生世話だんまり、あのおどろおどろしい声や、蒼白い顔や、引き包まんばかりの物影などは、とうに昔の夢と化して、どこかへ飛び去ってしまうのだった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
まア羽左衛門あたりの生世話の風格ぐらいが――」など愚にもつかぬ気障っぽいことを言っていると、突然、大広間の奥からけたたましいジャズが鳴り響き、続いて、「どうぞ皆さんダンスにお立ち下さい」というマイクロフォンの高声がきこえて来ました。
— 田中英光 『オリンポスの果実』 青空文庫
」「まあね、いって見れば、あたしは、女団洲と呼ばれたくらいだし、自分でも、団十郎のすることの方が好きだから――わかりもしないくせに、高尚ぶってるといわれたりしたけれど、もともとお狂言師は、生世話物をやらなかったからねえ。
— 長谷川時雨 『市川九女八』 青空文庫
源之助のような出たとこ勝負の役者には時によって、つぼの外れる所があるが、生世話物だと成功する率が多い。
— 折口信夫 『役者の一生』 青空文庫
とまれ源之助は、生世話物の調子のよさでは、近頃第一の人であろう。
— 折口信夫 『役者の一生』 青空文庫
源之助はその若い時にはこのように本格の竹本劇が出来たのに、次第にそれから遠ざかって生世話物に移って行ったのである。
— 折口信夫 『役者の一生』 青空文庫
菊五郎の芸は市川小団次の芸を移しているので、つまり写実的な生世話な狂言が多いのだが、それを源之助が継承したのである。
— 折口信夫 『役者の一生』 青空文庫
羽左衛門のせりふ廻しを生世話であるとする通説を否定して、「時代世話」だとした。
— 折口信夫 『市村羽左衛門論』 青空文庫