那地
那地
名詞
標準
文例 · 用例
伊那地方に入ると、天龍川は平凡化する、天龍が天龍の天龍たるところを失うてしまうのである、天龍は天龍峡の下流となつて、山が迫り谷が蹙つてその本質を発揮すると思ふ、もとり伊那の天龍はそれとしての味もあらうが。
— 昭和十四年 『旅日記』 青空文庫
お湯|嫌ひ8・19(夕) 最近|希臘の各地方を巡遊して帰つて来た京都大学の浜田青陵氏は(幾ら古い物好きな浜田氏だつて、まさか希臘ばかしを見て来た訳では無からうが、希臘だけは幾度見て来たといつても差支ない)希臘ほど失望させられた土地はない、那地は唯想像でだけ楽しむでゐればいゝ国だと甚くこき下してゐる。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
日本の画家がかうした目端の利く、忠実な女房をざらに持つてゐるのは実に結構な事だが、支那では女の出来が日本ほど思はしくないので那地の画家は女房の他に今一つ豆猿を飼つてゐる。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
「那地へ着いたら松魚のうまいのを鱈腹食はせるぞ。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
女房の通弁3・11(夕) 森村商事会社の取締役村井|保固氏は、なが/\米国へ渡つてゐて、那地で会社の地位を据ゑたのは、全くこの人一人の骨折だと言はれてゐる男である。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
長く那地の医師協会の会長を勤めてゐたバウガン氏なども、忙がしい間に閑を見つけると、冒険小説を手に取る事にしてゐる。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
雲の匂 若い登山家として知られてゐるK氏が、急に用事が出来て信州へ往つたからといつて、那地の深い山から折つて帰つた山独活を四五本とどけてくれた。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
半蔵の周囲には、驚くばかり急激な勢いで、平田派の学問が伊那地方の人たちの間に伝播し初めた。
— 第一部上 『夜明け前』 青空文庫