疾し
とし
形容詞
標準
文例 · 用例
余り随いて歩行いたのが疾しかったか、道中へ荷を下ろして、首をそらし、口を張って、 ――「とうふイ、生揚、雁もどき。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
此時艦頭に立てる武村兵曹は、右鬢に微傷を受けて、流るゝ血汐の兩眼に入るを、拳に拂つて、キツと見渡す海の面、電光の如く近づき來つた海底戰鬪艇は、本艦を去る事約一千米突――忽然波間に沈んだと思ふ間も疾しや遲しや、唯見る本艦前方の海上、忽ち起る大叫喚。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
理学士の耳にも正に滝太郎の声である、と思うも疾しや!
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
これに臨みて詔を草すれば、富貴我を遅つこと久し、これに臨みて命を拒まば、刀鋸我に加わらんこと疾し。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
時や疾し、ひよろひよろの青洋服はわと前へ面がはり、のめり泳ぎつ。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
父は、一寸私の堅い存在に疾しさを感じたらしく、素早く、「何とか云へよ。
— 牧野信一 『或る日の運動』 青空文庫
皆心中に疾しくて、とかくに殺戮したれども、醜行|已に為し了はり、密雲漸く散ずれば、積みかさなれる屍より階かけて、紅流れ、そのうしろ楼門|聳ゆ、巍然として鬱たり。
— 上田敏 『海潮音』 青空文庫
皆心中に疾しくて、とかくに殺戮したれども、醜行已に為し了はり、密雲漸く散ずれば、積みかさなれる屍より階かけて、紅流れ、そのうしろ楼門聳ゆ、巍然として鬱たり。
— 上田敏訳詩集 『海潮音』 青空文庫