偽悪
ぎあく
名詞
標準
pretense of evil
文例 · 用例
だが都会人の気の弱いものが、一たん飜ると思い切った偽悪者になることも、小初はよく下町で見受けている例である。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
「ガンベのいうことはそりゃあんまり偽悪的じゃないか。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
法要も何もあつたものではない――と、私は偽善者流の母の言葉と、偽悪者流の自分の余憤とを戦はせるのだが、人倫の仮面の善悪を見棄て、たゞに人間としての親と子の間に介在する絶対の因果は、怕ろしく、嘆かはしく、たゞ簡明であつて、道徳や潔癖のまゝに何も彼も振り棄てる道はなかつた。
— 牧野信一 『剥製』 青空文庫
男性の作家が、婦人作家に対するゆとりで、女は女のことをと、一段下につきはなしてみれば、川上喜久子という作者と作品との血肉関係の不自然さをとらえ得る室生犀星その人も、自分の作品に向うとその制作態度が、やはり時代的な意欲の逞しさに作用されて、偽悪の世界に四股をふんでいる姿であったのは面白い。
— 宮本百合子 『婦人と文学』 青空文庫
阿呆、ぐず、のろま、意久地なしは云ふに及ばず、気取り屋、おしやべり、臆病、卑怯、未練、ケチンボ、コセツキ屋、悧巧者、ひとりよがり、逆上家、やきもち屋、愚痴こぼし、お世辞屋、偽善者、偽悪者、影弁慶。
— 伊藤野枝 『サニンの態度』 青空文庫
彼は気の弱さと小ささからくる偽悪家だった。
— 長谷川時雨 『朝散太夫の末裔』 青空文庫
偽悪、衒学……そういう悪徳は、たしか、私には重過ぎる衣裳でしたわね」と第一日以来鬱積しきっていたものが、彼女の制御を跳ね越えて一時に放出された。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
私は強いて罪悪に身を委せようとする偽悪家を気取ったことはないか。
— 三木清 『語られざる哲学』 青空文庫