箱車
はこしゃ
名詞
標準
文例 · 用例
そのかわり、町の出はずれを国道へついて左へ折曲ろうとする角家の小店の前に、雑貨らしい箱車を置いて休んでいた、半纏着の若い男は、軒の藤を潜りながら、向うから声を掛けた。
— 泉鏡花 『半島一奇抄』 青空文庫
箱車を押す半裸体の馬来人は檳榔子の実を噛んでいて、血の色の唾をちゅっちゅと枕木に吐いた。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
雨の降る日に二条の鉄路の中央のひどいぬかるみの流れを蹴たててペンキ塗りの箱車を引いて行く二頭のやせ馬のあわれな姿や、それが時々爆発的に糞をする様子などを思い出すことはできる。
— 寺田寅彦 『銀座アルプス』 青空文庫
その日、両国向うの得客先へ配達する品があって、それは一番後廻、途中方々へ届けながら箱車を曳いて、草鞋穿で、小僧で廻った。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
何でも可なり大きな箱車で、上から菰を被せてあったようだったが、其を若い土方風の草鞋穿の男が、余り重そうにもなく、※々と引いて来る。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
東北その他へ出る汽車には、みんながおしおしにつめかけて、機関車のぐるりや、箱車の屋根の上へまでぎっしりと乗上って、いのちがけでゆられていくありさまでした。
— 鈴木三重吉 『大震火災記』 青空文庫
トロッコ様の箱車の座席が三段にわけてあり、まえに豪傑の虎さんと色男の有沢さんが乗り、真中にぼくと清さん、うしろに柴山と村川が乗りました。
— 田中英光 『オリンポスの果実』 青空文庫
葬式自動車みたいな巨大な箱車の中に、令嬢だか、女給だか、籠抜娼妓だか、マダム・バタフライだか、何が何やらエタイのわからない和洋服混交の貞操オン・パレードがギッチリ鮓詰めになっているその中央に、モダン鍾馗大臣の失業したみたいな吾輩が納まり返っているんだから、何の事はない一九三五年式大津絵だろう。
— 夢野久作 『超人鬚野博士』 青空文庫