襤褸布
ぼろぬの
名詞
標準
文例 · 用例
お前自身の面影は段々淡くなって、その淡くなったところが、聖人や英雄の襤褸布で、つぎはぎになっているからだ。
— 有島武郎 『惜みなく愛は奪う』 青空文庫
けれども彼女は、しばらくの間を薄い襤褸布団の中で、ただ、もじもじしていた。
— 佐左木俊郎 『蜜柑』 青空文庫
岡は襤褸布を絞つて、「私」を包みはじめた。
— 牧野信一 『心象風景』 青空文庫
つまり、壜型の粘土の私の像に、襤褸布の巻き方が足りなかつたゝめに氷結して、ポロポロになつてしまつたのである。
— 牧野信一 『心象風景』 青空文庫
」 岡は一向気にもしないで、土を練りあげると襤褸布で幾重にも包んである制作台の壜型を解きはじめた。
— 牧野信一 『心象風景(続篇)』 青空文庫
壜型の首のあたりを結んだ紐を解き、毛布をとり除くと、泥まみれの大風呂敷やら千切れた単衣やらと、とりどりの襤褸布が四、五、六、七重八重に剥ぎとられて、湿布が剥がされると漸く、頭のかたちから鼻筋へかけて稍々私のらしい線が現れかゝつてゐる粘土の原型が出たので、冗談を止めて私はモデル椅子に腰を降した。
— 牧野信一 『心象風景(続篇)』 青空文庫
制作台の下からは火鉢がとりのけられ、未成品を包む襤褸布の数も半分に減らされて、鼻のかたちなどはもう誰が見ても私のらしいすがたとすゝんでゐた。
— 牧野信一 『心象風景(続篇)』 青空文庫
自分の仕事といふものは一向に捗らず、憂鬱な痴想に耽るのみで冬をおくり春を迎へてゐる自分は、寧ろその襤褸布に包まれたまゝの姿にふさはしい――などゝ勿体さうに考へたりした。
— 牧野信一 『心象風景(続篇)』 青空文庫