思うり
おもうり
動詞
標準
文例 · 用例
「あはれ果敢なき塵塚の中に運命を持てりとも、穢なき汚れは蒙むらじと思へる身の、猶何所にか悪魔のひそみて、あやなき物をも思はするよ。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
少年時からの懷かしさで、今では兄のやうに思へる。
— 萩原朔太郎 『純情小曲集』 青空文庫
ああ我れ故郷に低徊して此所に思へることは寂しきかな。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
雪の賦雪が降るとこのわたくしには、人生が、かなしくもうつくしいものに――憂愁にみちたものに、思へるのであつた。
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
ロシアの田舎の別荘の、矢来の彼方に見る雪は、うんざりする程永遠で、雪の降る日は高貴の夫人も、ちつとは愚痴でもあらうと思はれ……雪が降るとこのわたくしには、人生がかなしくもうつくしいものに――憂愁にみちたものに、思へるのであつた。
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
勿論それは余りお菓子の欲しくない人が駄菓子の方が寧ろ美味い、といふ時のやうなふうにして発生した通念と見えるが、それにしても、一応の由来はあると思へるので、一寸その事に就いて云つてみれば、 西洋人の方が、我々よりも尠くも形の上では楽天的である、従つて即興的であるよりも構成を怡しむ習性を一層持つてゐる。
— 中原中也 『詩と其の伝統』 青空文庫
不可ないとは云はないまでも、これでは詩人が狭量だとのやうに思へる人は、詩の世界の広さを知らないからのことであらう。
— 中原中也 『我が詩観』 青空文庫
彼女は、連れ出した男を此の世に於ける唯一の寄すがり者のやうに思へる心に浮々した足取で、そのフェルトをペタペタ夜道に打つつけながら、解雇された仲間で一番給料も多かつた男の下宿の方に歩んだ。
— ――飜弄さる 『蜻蛉』 青空文庫