薬壜
くすりびん
名詞
標準
文例 · 用例
床の間の隅には薄うく埃をかむった薬壜が何本も空になっている。
— 梶井基次郎 『冬の蠅』 青空文庫
小山は画板を肩から腋へ掛け畳将几を片手に、薬壜へ水を入れてハンケチで包んだのを片手に。
— 国木田独歩 『小春』 青空文庫
鶴吉は綺麗に片づいた茶の間を心地よげに見廻して、棚の上などに眼をやつて居たが、その上に載つて居る薬壜を見ると、朝の事を思ひ出して笑ひながら、「危いの怖いのつて、子供にはうつかりして居られやしない。
— 有島武郎 『お末の死』 青空文庫
そこで、けさも家を出て、薬壜をさげてよろよろと歩いてくると、床屋の角の電信柱の前でもう歩けなくなったんでしょう、電信柱に倚り掛かってしばらく休んでいたかと思ううちに、急にぐたぐたと頽れるように倒れてしまったんです。
— 岡本綺堂 『ゆず湯』 青空文庫
」 大きな声が、病室一杯に響き、薬壜に響き、そして皺くちやな病人の胸の底にまで響くと病人の眼は初めて和いだ。
— 初出未詳 『茶話』 青空文庫
第六十回 後に三本 煖炉の燃えて居る間に余は次の室に行き戸棚の中を検査したが、殆ど無一物の有様では有るけれど棚の隅に二三の薬壜が埃に埋まった儘である。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
「なんだか、薬壜のようだネ」万事を了解したらしい様子の帆村が、低声で云った。
— 海野十三 『西湖の屍人』 青空文庫
そこへマリ子がバタバタ階段をあがってくる気配がしたので、私は帆村に、あとを聞いてみる余裕もなく、その薬壜をまた元のポケットに収いこんだ。
— 海野十三 『西湖の屍人』 青空文庫