辛くも
からくも
副詞
標準
barely
文例 · 用例
レールに近く養蚕広告のペンキ塗の看板が、鉛のような鉱物性の色をして、硬く平ったく烈しい日の光に向って立っていたが、汽車と擦れ違いさまに、仆れそうになって、辛くも踏み止まった。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
強いてそれらしいものを娘の言葉の中から捕捉するなら娘がいったいくたたびか迎える辛くも新鮮な青春、かくて遂に老ゆることを知らずして苦しくも無限に華やぎ光るいのち。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
この洞の外の海に通ずる隙間は辛くも外をのぞくことができるに過ぎぬ。
— 宮澤賢治 『龍と詩人』 青空文庫
が、私は辛くも自分を制御してゐた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
元来|伏木直江津間の航路の三分の一は、遙に能登半島の庇護によりて、辛くも内海を形成れども、泊以東は全く洋々たる外海にて、快晴の日は、佐渡島の糢糊たるを見るのみなれば、四面※茫として、荒波山の崩るるごとく、心易かる航行は一年中半日も有難きなり。
— 泉鏡花 『取舵』 青空文庫
續いて一人の美少年、何處より落ちたりけん、華嚴の瀧の底を拔けて、巖の缺と藻屑とともに、雲より落ちつと覺しきが、助けを呼ぶか諸手を上げて、眞俯向けに流れ來しが、あはよく巖に住まりて、一瀬造れる件の石に、はた其の桂の枝まつはりたるに、衣の裾を卷き込まれ、辛くも其の身をせき留めつ。
— 泉鏡花 『妙齡』 青空文庫
こんな時こそ三十六計の奥の手を出して一散に駆け出し、危うく吾妻川の河底へ生埋めになる急場を辛くも通り過ぎ、四人相顧みて工夫の猛悪なるに驚ろく。
— 井沢衣水 『本州横断 痛快徒歩旅行』 青空文庫
砲弾にて破損せる古き穀倉の内部、辛くも全滅を免かれしバナナン軍団、マルトン原の臨時|幕営。
— 一幕 『饑餓陣営』 青空文庫
作例 · 標準
最終試験に、辛くも合格することができた。
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あの選手は、辛くもゴール直前で逆転勝利を収めた。
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山道で道に迷ったが、辛くも日没前に麓にたどり着いた。
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大事故になりかけたが、運転手の機転で辛くも難を逃れた。
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