歔欷
きょき
名詞動詞-サ変動詞-自動詞
標準
sobbing
文例 · 用例
彼は芭蕉よりもなお悲しく、夜半に独り起きてさめざめと歔欷するような詩人であった。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
新古今集の和歌は、亡び行く公卿階級の悲哀と、その虚無的|厭世感の底で歔欷しているところの、艶に妖しく媚めかしいエロチシズムとを、暮春の空に匂う霞のように、不思議なデカダンスの交響楽で匂わせている。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
夜汽車の暗爾たる車燈の影に、長女は疲れて眠り、次女は醒めて夢に歔欷す。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
鮮純なリズムの歔欷はそこから来る。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
そして、ジャズの音が激しく、光芒のなかで、歔欷くように、或は、猥雑な顫律を漾わせて、色欲のテープを、女郎ぐものように吐き出した。
— 吉行エイスケ 『東京ロマンティック恋愛記』 青空文庫
独逸製のサイコロを買うと、そもまま歔欷くように円筒状の夜の大阪を感じていた。
— 吉行エイスケ 『大阪万華鏡』 青空文庫
その父と子の心と心とが歔欷の中にぴつたり抱き合ふ瞬間の作者の筆には、恐ろしい程|眞實な愛の發露を鋭く描き出してゐるではありませんか。
— 南部修太郎 『三作家に就ての感想』 青空文庫
その日も、私は、市川の駅へふらと下車して、兄いもうと、という活動写真を見もてゆくにしたがい、そろそろ自身|狼狽、歯くいしばっても歔欷の声、そのうちに大声出そうで、出そうで、小屋からまろび出て、思いのたけ泣いて泣いて泣いてから考えた。
— ――(生れて、すみません。) 『二十世紀旗手』 青空文庫