金雀花
きんすずか
名詞
標準
文例 · 用例
けふの夕方は、泣きだしさうな日が、丘の上の金雀花の中で外套を羽織つたまま、横向に臥てゐる。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
薄れた白つぽい日の目は酒場の床に吐散らした痰のやうで、黄いろい金雀花の敷藁と、黄いろい秋の金雀花を照してゐる。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
蕁麻の匂、金雀花の匂がして、和蘭陀げんげの匂もして、乳の匂がする。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
髮に微笑を含んで清い小川の岸に寄りかかる少女子、金雀花、金髮の金雀花、色白の金雀花、清淨な金雀花。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
金髮の金雀花よ、夢ばかりみてゐる纖弱い木、わたしの悲しい心の悦。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
しかし貴郎は殺人鬼です」二 理学界の権威、植物学の大家として世界に其名を響かせていた理学博士のコックニー氏が阿弗利加大陸の探検を了えて自分の故郷のカンタブリア村へ自分の息子のバルビューと一緒に永住の覚悟で移転して来たのは、今から丁度二年前の金雀花の咲く春であった。
— 国枝史郎 『物凄き人喰い花の怪』 青空文庫
藪木の交る針金雀花、熊笹の中から飛び立つ雉子、それから深い谷川の水光りを乱す鮎の群、――彼はほとんど至る所に、仲間の若者たちの間には感じられない、安息と平和とを見出した。
— 芥川龍之介 『素戔嗚尊』 青空文庫
それはまた事によると、祭壇の前に捧げられた、水々しい薔薇や金雀花が、匂っているせいかも知れなかった。
— 芥川龍之介 『神神の微笑』 青空文庫