日金
ひがね
名詞
標準
文例 · 用例
ちょうどその日金魚屋が来たので死んだのの代わりに同歳のを一尾買って入れた。
— 寺田寅彦 『藤棚の陰から』 青空文庫
媼の頭は白さを増したが、桂木の膝のあたりに薄日が射した、但件の停車場に磁石を向けると、一直線の北に当る、日金山、鶴巻山、十国峠を頂いた、三島の連山の裾が直に枯草に交るあたり、一帯の霧が細流のやうに靉靆いて、空も野も幻の中に、一際濃やかに残るのである。
— 泉鏡花 『二世の契』 青空文庫
読本ならば氷鉄といおう、その頂から伊豆の海へ、小砂利|交りに牙を飛ばして、肌を裂く北風を、日金|颪と恐をなして、熱海の名物に数えらるる。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
さてこの物語の起った年は、師走から春の七草かけて、一たびも日金が颪さず、十四五年にも覚えぬという温暖さ、年の内に七分咲で、名所の梅は花盛り、紅梅もちらほら交って、何屋、何楼、娘ある温泉宿の蔵には、雛が吉野紙の被を透かして、あの、ぱっちりした目で、密と覗いても見そうな陽気。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
小田原よりか、函嶺からか、それとも三島、日金の方か、たとい家は崖の上でも、十里は見通し得る筈がない。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
手も足も庇わずに、島の入日に焼かれながら、日金颪を浴びながら、緑の黒髪、煙れる生際、色白く肥えふとりて、小造りなるが愛らしく、その罪のなさ仇気なさも、蝴蝶の遊ぶに異ならねど、浪打際に岩飛ぶ風情を、土地の者は渾名して、千鳥々々というのであった。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
日金颪十二「へい、夫人、真平御免下さりまし、へい、唯今は。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
「どうもこの、日金颪が参りますと、熱海は難でござりまする。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫