饅
ぬた
名詞
標準
nuta
文例 · 用例
とある杉垣の内を覗けば立ち並ぶ墓碑|苔黒き中にまだ生々しき土饅頭一つ、その前にぬかずきて合掌せるは二十前後の女三人と稚き女の子一人、いずれも身なり賤しからぬに白粉気なき耳の根色白し。
— 寺田寅彦 『半日ある記』 青空文庫
こんな風であるから、これも自分には覚えておらぬが横浜から雇った車夫の中に饅頭形の檜笠を冠ったのがあったそうだ。
— 寺田寅彦 『車』 青空文庫
斜めに来る光がこの饅頭笠をかぶった車夫の影法師を乾き切った地面の白い上へうつして、それが左右へゆれながら飛んで行くのが訳もなく子供心に面白かったと見える。
— 寺田寅彦 『車』 青空文庫
囲炉裏に榾をさしくべ、岩魚の串刺にしたやつを炙りながら、山林吏が、さっき捨てた土饅頭は何だね、と案内の猟師に訊ねる、旦那、ありゃ飛騨の御大名の墳で、と右の一伍一什をうろ覚えのままに話す、役人は、そんな由緒のあるものと知ったら、何とか方法もあったものをと口惜しそうな顔をした。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
雨嫌いな私は、鰍沢で、万一の用心にと、買って置いた饅頭笠を冠り、紐の結び方で苦心をしているうちに、意地の悪い雨は、ひとまず切り上げてしまって、下界を覗く空の瞳がいまいましいまでに冷たい。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
下谷のある町の金貸しの婆さんの二階に間借りして、うら若い妻と七輪で飯を焚いて暮している光景のすぐあとには、幼い児と並んで生々しい土饅頭の前にぬかずく淋しい後姿を見出す。
— 寺田寅彦 『厄年と etc.』 青空文庫
七重の瀧の茶店で「燒饅頭」と貼札したものを試みに注文したら、丸いパンのやうなものに味噌※を塗つたものであつた。
— 寺田寅彦 『伊香保』 青空文庫
帰宅してみると猫が片頬に饅頭大な腫物をこしらえてすこぶる滑稽な顔をして出迎えた。
— 寺田寅彦 『札幌まで』 青空文庫
作例 · 標準
居酒屋で新鮮な魚のぬたを注文した。
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この季節は、わかめとイカのぬたが美味しい。
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母が作ったぬたは、さっぱりしていて食欲をそそる。
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