込み上げる
こみあげる
動詞
標準
文例 · 用例
「こんな腐った髪の毛のような蔓からも、やっぱり春になると、ちゃんと芽を出すのね」 かの女は、こんな当りまえのことを考えながら、思い切って指を出し、蔦の小さい芽の一つに触れると、どういうものか、すぐ、むす子のことを連想して、胸にくっくと込み上げる感情が、意識された。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
」女は込み上げる涙を押へて、「私も只お側に居ると云ふ丈け、生命を維がせて下さると云ふ丈け、なんにも、なあんにもないんですわねえ。
— 平出修 『計画』 青空文庫
」女は込み上げる涙を押へて、「私も只お側に居ると云ふ丈け、生命を維がさせて下さると云ふ丈け、なんにも、なあんにもないんですわねえ。
— 平出修 『計畫』 青空文庫
船にいくじがなくて、胸に込み上げる不快の感覚をわずかにおさえつけて少時の眠りを求めようとしている耳元に、かの劣悪なレコードの発する奇怪な音響と騒がしい旋律とはかなりに迷惑なものの一つである。
— 寺田寅彦 『蓄音機』 青空文庫
「咳が出ますか」「から――からっ咳が出て……」と云い懸ける途端にまた二つ三つ込み上げる。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
それにじつとしてそこに坐つてゐる父親を見ても、涙がすぐ込み上げるやうに出て來るのだつた。
— 田山花袋 『道綱の母』 青空文庫
胸の中は空っぽになってわくわくと込み上げる様になる――遂、堪らなくなって、ハアーと大きく息を吸うと胸の中の汚いものがすっかり嘔き出されたようにすがすがしい気持になって、虐げられた心臓は嬉しそうに生れ変ったような新らしい力でドキンドキンと動き出す。
— 蘭郁二郎 『息を止める男』 青空文庫
わたしの夜の太陽よ、たつた一つの電灯よ、わたしの暗い心から吐息と共に込み上げる思想の水を導いて机にてらす電灯よ。
— 與謝野晶子 『晶子詩篇全集』 青空文庫