打ち仰ぐ
うちあおぐ
動詞
標準
文例 · 用例
アリストフアーネスの像を打ち仰ぐ者は稀ですが、イースキユラスやソフオクレースの下には何時も多くの哀詩歌人の手で礼讚された花環が絶えたことのないといふ現象を見ても自明なことではありませんか。
— 牧野信一 『山彦の街』 青空文庫
打ち仰ぐ紺碧の空に、道心格子、月なみ、三人立ち五人立ちの武者絵凧が、或は勝鬨をあげ、或は闘いを挑む様は、これや陽春第一の尖兵戦、江戸ッ児はかくして三百六十五日その負けじ魂を磨きつつあるのである。
— 柴田流星 『残されたる江戸』 青空文庫
かなたに屋根のみ見ゆる村里より午鶏の声ゆるく野づらを渡り来て、打ち仰ぐ空には薄紫に焦がれし雲ふわふわと漂いたり。
— 徳冨蘆花 『不如帰 小説』 青空文庫
いままでとても幾度か幾度か心に黎明はかんじたけれど、あれらをかりそめの町中での夜明け空とするならば、これは比べものにも何にもならない夏草しとど露めきて百花乱るる荒漠千里の大高原に、真ッ裸になって打ち仰ぐ大日輪の光りにも似たるものよとおもわないわけにはゆかなかった。
— 正岡容 『小説 圓朝』 青空文庫
いや時としてはその卑しむべき娼婦の姿を、さながら女神を打ち仰ぐように崇拝さえもしたのですから。
— 谷崎潤一郎 『痴人の愛』 青空文庫
」「…………」 私は凝乎と無言で父様のお顔を打ち仰ぐ。
— 橘外男 『令嬢エミーラの日記』 青空文庫
応待に困じて、私はただ祈る心に、厳そかな白峰赤石の暮色を、打ち仰ぐばかり……幸いなことに、やがて痛みが薄らいだという。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫