巻葉
まきば
名詞
標準
文例 · 用例
蕨の青さ、つつましさ、花か、巻葉か、知らねども、その芽の黄さ、新らしさ……庭の井戸から水揚げて、しみじみと撰る手のさばき、見るもさみしや、ふる雨に。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
昨日の雨を蓑着て剪りし人の情けを床に眺むる莟は一輪、巻葉は二つ。
— 夏目漱石 『一夜』 青空文庫
睡蓮の新芽がまだ巻葉のまま水面に突き立っている他は、園内の木の葉は黄色を滲ませて美しかった。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
」「逢いませんでしたよ」 と今度は、いままで黙って巻葉を燻らしていた黒塚氏が乗り出した。
— 大阪圭吉 『死の快走船』 青空文庫
墨汁のかわく芭蕉の巻葉かな芍薬は散りて硯の埃かな五月雨や善き硯石借り得たり(六月十三日)三十三○同郷の先輩池内氏が発起にかかる『能楽』といふ雑誌が近々出るさうである。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
モスク※で五月、俄に樹々が新緑につつまれて夜気の中で巻葉のほぐれる戦ぎがきこえるような夜を思い出します。
— 一九四〇年(昭和十五年) 『獄中への手紙』 青空文庫
近頃の自然こそ、人間が眠っている暗い夜の間にも巻葉の解かれるサッサッと云う微な戦ぎで天地を充たすようだ。
— 宮本百合子 『新緑』 青空文庫
そして六月のはじめ頃になって、小さな蓮の芽が出だしたけれども、その巻葉が開きかけると、しなしなと横に倒れて、四五寸くらいの大きさにしかならず、それもやがて縁の方から枯れていった。
— 豊島与志雄 『蓮』 青空文庫