狛笛
こまぶえ
名詞
標準
文例 · 用例
……あまり遅うなっては、さだめし、民部さまや小文治さまがおあんじなされているかもしれぬ……」 そう思いながら、それでもまだ、帰る道をむなしく歩いていくことはおしそうに、狛笛をとって、その歌口を湿しはじめる。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
ふたたび、狛笛の音が高くすんだ。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
おお、されば小太郎山のとりでから、この躑躅ヶ崎の高楼にとらわれてきている咲耶子が、悶々として眠られぬ幽窓に、あの影をふと見つけて、狛笛の歌口に、クロよ、クロよ、と呼ぶ音であったろうか。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
「いないぞ、ここには」「さっきまで狛笛の音がしていたのに」「では、逃げたのであろう」「いや、いくら咲耶子でも、この堅固をやぶっては逃げられまい」「それならここにいそうなものだが」「ふしぎだなあ」「奥の部屋には」「つぎの間はない!
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
いと面白き狛笛の音です。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫
御隠家様を初め、一同の者に勧められて、道中師の伊兵衛がぜひなく試みた狛笛の一曲でしょう。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫
あなたの狛笛、曲や終りけん、ハタと止んで、こんどは能がかりの総囃子が、前よりも、調子高く、大鼓を入れて鳴り出します。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫
伊兵衛の狛笛の一曲が終りますと、夜宴の無礼講はここにくずれて、阿佐ヶ谷連中の能がかりを皮切りに、赤い顔をならべた郷士たちが、野趣横溢な武蔵野歌を手拍子でうたえば、珍しく、千蛾老人もいでやと立って、あざやかなところを一さし舞って見せる。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫