腐
腐
名詞
標準
文例 · 用例
只予の性質として人の子とあるものが只自己一身の功業にのみ腐心するは不都合である、両親を見送っての後ならば、如何なることを為すとも自己の一身は自己の随意に任せてよいが、父母猶存する間は父母と自分との関係を忘れてはならぬ。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
身の行ひは清くもあれ、心の腐りのすてがたくば、同じ不貞の身なりけるを、いざさらば心試しに拝し参らせん。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
すなわち、縦縞が感覚および感情にとってあまりに陳腐なものとなってしまった場合、換言すれば感覚および感情が縦縞に対して鈍痲した場合に、横縞が清新な味をもって特に「いき」と感ぜられることが可能である。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
そのため書銘ばかりでなく、内容の方でも、いろいろ「持ち腐れ」になつてしまつた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
そこには生える不思議の草本あまたの悲しい羽蟲の類それは憂鬱に這ひまはる 岸邊にそうて這ひまはるじめじめとした川の岸邊を行くものはああこの光るいのちの葬列か光る精神の病靈か物みなしぜんに腐れゆく岸邊の草むら雨に光る木材質のはげしき匂ひ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
くづれる肉體蝙蝠のむらがつてゐる野原の中でわたしはくづれてゆく肉體の柱をながめたそれは宵闇にさびしくふるへて影にそよぐ死びと草のやうになまぐさくぞろぞろと蛆蟲の這ふ腐肉のやうに醜くかつた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
しづかにわたしは夢の記憶をたどらうとする夢はあはれにさびしい秋の夕べの物語水のほとりにしづみゆく落日としぜんに腐りゆく古き空家にかんするかなしい物語。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
運命の暗い月夜を翔けさり夜浪によごれた腐肉をついばみ泣きゐたりしがああ遠く飛翔し去つてかへらず。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫