畑物
はたけもの
名詞
標準
文例 · 用例
校長先生は、まづ、町にゐる商賣人に自分達所有の畑物を全部賣つてしまひ、その背水の陣で、地主に當ることにしたらいゝ、といふことを云つた。
— 小林多喜二 『防雪林』 青空文庫
○くだものに准ずべきもの 畑に作るものの内で、西瓜と真桑瓜とは他の畑物とは違うて、かえってくだものの方に入れてもよいものであろう。
— 正岡子規 『くだもの』 青空文庫
田物、畑物を供えた器も、神仏混淆のチグハグなもので、あたり近所から、借り集めて人寄せに間に合わせるという気分が、豊かに漂うのであります。
— 年魚市の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
自家の畑物をみんな食べてしまっている哀れな夫婦に、手の尽しようのない貧乏が永い間くい込んでいた。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫
」「畑物に月がさしたらそれはみな仏の座のように申します。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫
いままでも、白い菜のほかに、彼は畑物を掠めなければ、たつきに趁われがちだった。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫
或る夏の夕方には、布片一枚を畑物を掠めた償いに畝の上に置いてもどったこともあれば、若干の金をも眼に立つところに置いてただで掠める野のものでない証左としていた。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫
彼の焦燥は彼のなかに荒れ立ってゆき、彼は身動きもせずに愉しい五年の月日をあとぐりし、それにふたたび逢えなくなればどうなる自分であろうか、筒井がいるために貧窮すら応えず、そして彼女がいたために多く掠めた畑物の咎は、百姓だちから許されていたようなものだった。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫