影色
かげいろ
名詞
標準
文例 · 用例
先ず別々に取り分けたが、其の内の一枚は秀子のに相違ない、秀子が何時も着て居る日影色の無地である、今一枚は少し短くて幅が広いかと思われる、之は仕立の粗末な所が何うも出来合いの安物を買ったのらしい。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
矢張り誰のとも分らぬのだ、エエ余計な心配をしたと、つまらぬ事を安心して是から残らずの着物の衣嚢を検めたが、唯一つ秀子のと思われる日影色の着物から一枚の名刺が出た、唯夫だけの事だ。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
巴里のラセニール街二十九番に住んで居るポール・レペル先生です」扨は日影色の着物から出た彼の医学士の名刺に、御身を助けるは広い世界に此の人の外にないと書いて有った其の人だ、事の符号して居る所を見ると満更嘘らしくもない。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
余は養蟲園の一室で、秀子が着たと思われる日影色の着物と一緒に、牢屋で着る女囚の服の有るのを見た。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
一時の鳴るが合図であると、殆ど競馬の馬が出発の号砲を待つ様に、余は張り切って緑盤の許に行き、今にも一時の鐘が鳴るか、今にも一時の鐘が鳴るか、今にも緑盤が動くかと、見詰める目に忽ち留る一物は、緑盤の縁に介まって食出して居る絹の切れで有る、見紛う様もない日影色の地合は確かに秀子の着物である。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
私は机に伏さったまゝ郊外のさわやかな夏影色を、グルグル頭に描いてみた。
— 林芙美子 『放浪記(初出)』 青空文庫
思ひ胸に迫りて、吁々と吐く太息に覺えず我れに還りて首を擧ぐれば日は半西山に入りて、峰の松影色黒み、落葉を誘ふ谷の嵐、夕ぐれ寒く身に浸みて、ばら/\と顏打つものは露か時雨か。
— 高山樗牛 『瀧口入道』 青空文庫