重クロム酸
じゅうクロムさん
名詞
標準
bichromic acid
文例 · 用例
藤原平三に、重クロム酸加里を混入せる酒を呑ましめたることも、自分の利得のための殺人として情状酌量の余地なし。
— 佐左木俊郎 『或る部落の五つの話』 青空文庫
前述の人工アメーバに就て言うならば、重クロム酸加里と水銀とが、硝酸の溶液中で触れ合うと、その部分にクロム酸水銀と称する物質が出来て、水銀の表面張力が弱められます。
— 小酒井不木 『人工心臓』 青空文庫
殊に軽部は馬鹿は馬鹿でも私よりも先輩で劇薬の調合にかけては腕があり、お茶に入れておいた重クロム酸アンモニアを相手が飲んで死んでも自殺になるぐらいのことは知っているのだ。
— 横光利一 『機械』 青空文庫
その夜私たち三人は仕事場でそのまま車座になって十二時過ぎまで飲み続けたのだが、眼が醒めると三人の中の屋敷が重クロム酸アンモニアの残った溶液を水と間違えて土瓶の口から飲んで死んでいたのである。
— 横光利一 『機械』 青空文庫
酒を飲みたくなったときより私が重クロム酸アンモニアを造っておいた時間の方が前なのだから疑い得られるとすると私なのにも拘らず、それが軽部が疑われたというのも軽部の先ずひと目で誰からも暴力を好むことを見破られる逞しい相貌から来ているのであろう。
— 横光利一 『機械』 青空文庫
そうして私が屋敷を殺害するのなら酒を飲ましておいてその上重クロム酸アンモニアを飲ますより仕方がないと思ったことさえあることから考えても、彼もそのように一度は思ったにちがいないであろうから。
— 横光利一 『機械』 青空文庫
よしたとえ日頃考えていたことが無意識に酔の中に働いて彼が屋敷に重クロム酸アンモニアを飲ましたのだとするならそれなら或いは屋敷にそれを飲ましたのは同様な理由によって私かもしれないのだ。
— 横光利一 『機械』 青空文庫
私は重クロム酸アンモニアの置き場を一番良く心得ていたのである。
— 横光利一 『機械』 青空文庫