磨る墨
するすみ
名詞
標準
文例 · 用例
そして、腰元の磨る墨の匂がほんのりとたゞよう中に、短冊を片手に、燈火のもとに近寄りながら、じきにすら/\と見事な筆のあとを走らせて行った。
— 谷崎潤一郎 『武州公秘話』 青空文庫
馬も宇治川先陣の池月、磨墨に勝るとも劣らぬ名馬じゃ」「………」「そこ、そこ、そこじゃ、流れの狭いがちと玉に瑾じゃな。
— 三河に現れた退屈男 『旗本退屈男 第五話』 青空文庫
かの宇治川の合戰に、梶原の磨墨に乘り勝つて、殿が先陣の功名させられたも、一つはこの生月の働きぢやぞ。
— 岡本綺堂 『佐々木高綱』 青空文庫
なみ/\の者ではよも渡すまじと見てあるところへ、殿は生月、梶原は磨墨、黒馬二匹が轡をならべて、平等院の坤、たちばなの小島が崎よりざんぶ/\と乘り入つた。
— 岡本綺堂 『佐々木高綱』 青空文庫
女のつけた振袖に、紛たる模様の尽きて、是非もなき磨墨に流れ込むあたりに、おのが身の素性をほのめかしている。
— 夏目漱石 『草枕』 青空文庫
その後とても信州井上より後白河院へ奉りし馬を井上黒、武州河越より平知盛に進ぜしを河越黒、余りに黒い故|磨墨、馬をも人をも吃いければ生※など、多く毛色産地気質等に拠って名づけたので、津国の浪速の事か法ならぬ。
— 馬に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
そしてそのかわりに生食には少し劣るが、やはり稀代の逸物である磨墨という名馬を与えられた。
— 伊丹万作 『余裕のことなど』 青空文庫
源太はいつたんは失望したが、しかし生食が出てこぬかぎり、味方の軍勢の中に磨墨以上の名馬はいないので、その点では彼は得意であつた。
— 伊丹万作 『余裕のことなど』 青空文庫