逢魔
おうま
名詞
標準
文例 · 用例
(私に貸さい、の、あのや、燃え搦まった車で、逢魔ヶ時に、真北へさして、くるくる舞いして行かさるは、少い身に可うないがいや、の、殿、……私に貸さい。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
逢魔が時の薄暗がりより漸次に元気衰へつ、夜に入りて雨の降り出づるに薄ら淋しくなり増りぬ。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫
ところへ、迷うた人の事なれば、浅黄の帯に緋の扱帯が、牛頭馬頭で逢魔時の浪打際へ引立ててでも行くように思われたのでありましょう――私どもの客人が――そういう心持で御覧なさればこそ、その後は玉脇の邸の前を通がかり。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
逢魔が時からは朧にもあらずして解る。
— 泉鏡花 『絵本の春』 青空文庫
よく言う事だが、四辺が渺として、底冷い靄に包まれて、人影も見えず、これなりに、やがて、逢魔が時になろうとする。
— 泉鏡花 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫
気の強いのは、おのれ、凸助……いや、鼻ぴっしゃり、芋の葉を被っているけに、衣ものの縞柄も気のせいか、逢魔が時に茫として、庄屋様の白壁に映して見ても、どれが孫やら、忰やら、小女童やら分りませぬ。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
逢魔ヶ時を、慌しく引き返して、旧来た橋へ乗る、と、(きりりりり) と鳴った。
— 泉鏡花 『海の使者』 青空文庫
……にもかかわらず、烏が騒ぐ逢魔が時、颯と下した風も無いのに、杢若のその低い凧が、懐の糸巻をくるりと空に巻くと、キリキリと糸を張って、一ツ星に颯と外れた。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫