總
さとし
名詞
標準
文例 · 用例
町内一の財産家といふに、家内は祖母と此子二人、萬の鍵に下腹冷えて留守は見渡しの總長屋、流石に錠前くだくもあらざりき、正太は先へあがりて風入りのよき塲處を見たてゝ、此處へ來ぬかと團扇の氣あつかひ、十三の子供にはませ過ぎてをかし。
— 樋口一葉 『たけくらべ』 青空文庫
八|疊の座敷に六|枚屏風たてゝ、お枕もとには桐胴の火鉢にお煎茶の道具、烟草盆は紫檀にて朱羅宇の烟管そのさま可笑しく、枕ぶとんの派手摸樣より枕の總の紅ひも常の好みの大方に顯はれて、蘭奢にむせぶ部やの内、燈籠臺の光かすかなり。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
そんなかすかな哀れなものに、私の總體の重力で心ゆくばかりすがりつきたいのである。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
まるでお母さんのふところに抱かれた子供が、甘つたれてすすりなきをするときのやうな、なんともいへない SWEET の感傷が、私の總身をしびれるやうにふるはせたのである。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
イザといへば總がかりで、私に掴みかかつてくるのだと思つた。
— 萩原朔太郎 『芥川龍之介の死』 青空文庫
「かつぽれ」は雀三郎一座がおしまひの幕の時、いつも樂屋總出でそれを踊つたものだから、私もそれを踊ることにしたのである。
— 太宰治 『思ひ出』 青空文庫
派手な大島絣の袷に總絞りの兵古帶、荒い格子縞のハンチング、淺黄の羽二重の長襦袢の裾がちらちらこぼれて見えて、その裾をちよつとつまみあげて坐つたものであるが、窓のそとの景色を、形だけ眺めたふりをして、「ちまたに雨が降る。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
と、足先からかう百足にでも這はれてゐるやうな戰慄が總身に傳はつて來て、頭の中がぐらぐらしてくるやうな、厭な氣持に襲はれたのだつた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫