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被虐性

ひぎゃくせい
名詞
1
標準
文例 · 用例
それを見物に行く町の若い衆達のうちには不思議な嗜被虐性変態趣味をもった仲間が交じっていたようである。
寺田寅彦 五月の唯物観 青空文庫
そして顔色を蒼ざめさしたり、急に赤めたり、しかもわきへ避けて行かないで、だん/\眼と口とが茫漠となるところを見ると、一種の被虐性の恍惚に入つてゐるものゝやうに見えた。
岡本かの子 過去世 青空文庫
雪子の細胞には、他人のさういふ仕打ちの底の心理を察して羨むだけの旧家育ちの人間によくある、加虐性も被虐性も織り込まれてゐた。
岡本かの子 過去世 青空文庫
能の、動きの節約そのものの性質のなかには、明らかに日本の中世の社会生活からもたらされた被虐性、情感の表現を内へ追い込む性格が作用していて、しかも、ぎりぎりまで剪りこまれた外面へのあらわれの裡に、精神と情緒のほとばしる極限を表現しようとする芸術の手法である。
宮本百合子 今日の生活と文化の問題 青空文庫
「ひかげの花」にしろ「春琴抄」にしろそれぞれの作家の年来の特色を年来の色調のままに発揮したものであり、特に「春琴抄」は物語の様式をつかわれて、同じ耽美的の被虐性を描くにしても往年のこの作者が試みた描写での執拗な追究、創造は廃されている。
宮本百合子 昭和の十四年間 青空文庫
蓋し武州公の如き被虐性の性慾を持つ人は、やゝともすると相手の女性を己れの注文に応ずるような型に当て篏めて空想するから、実際に於いてその婦人は彼が語るような残忍な女子でないことが多い。
谷崎潤一郎 武州公秘話 青空文庫
蓋し被虐性の快楽と雖も矢張「快楽」の一種には相違ないから、もと/\利己的性質を帯びていることは明かであるが、兎角此の癖のある人々はつい深入りをして身を誤まる危険が多いのに、武州公は彼一流の秘密な快感を追いながら、而も着々として周囲にあるものを蚕食し、領土をひろげて行ったのである。
谷崎潤一郎 武州公秘話 青空文庫