陰深
いんしん
形容動詞
標準
文例 · 用例
木々は野生えのままに育ち、春は梅桜乱れ咲き、夏は緑陰深く繁りて小川の水も暗く、秋は紅葉の錦みごとなり。
— 国木田独歩 『星』 青空文庫
室には陰深の気が充ちわたって、あたりがしんとした。
— 田山花袋 『田舎教師』 青空文庫
春去夏来新樹辺、緑陰深処此留連、尋常性癖耽閑談、不愛黄鶯聞杜鵑 その時一人の旅人が――武者修行風の若い武士が、麓の方からやって来た。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
仮面は能面の重荷悪尉で、狭い額、円の眼、扁平の鼻、カッと開いた口、顎に垂らした白い髯、眼下の頬に畳まれた蜒々とした縦横の皺――すべて陰深たる悪人の相で、恋の重荷を負いながらその重量に耐えかねて、死んで女御に祟ったという、山科荘園の幽霊に、象り作った仮面である。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
あたりを打つ雨音の底に、夜のふけるひびきが陰深と鼓膜を衝いて、安兵衛も、黒装束の人数も引き返してくる気勢はない。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
呼吸を凝らしている文次の耳へ、陰深たる寂寞を破って、かすかに聞こえてくるのは、かの猫侍は内藤伊織のじゃらじゃら声ではないか。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
夜陰深更、時として、表の街路に、馬蹄の音が聞えた。
— 豊島与志雄 『春盲』 青空文庫
彼は空を仰ぎ、そしてまた陰深たる木立の奥をすかして見た。
— 豊島与志雄 『恩人』 青空文庫