急忙
きゅうぼう
名詞
標準
文例 · 用例
――吹きかはす銀の喇叭もたえだえに、渦巻き猛る楽の極、蒼海けぶり、悪の雲とどろとどろの乱擾に急忙しくも呪はしき夜のたたずまひ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
宗助は微笑しながら、急忙しい通りを向側へ渡つて、今度は時計屋の店を覗き込んだ。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
新らしく世帶を有つて、新らしい仕事を始める人に、あり勝ちな急忙しなさと、自分達を包む大都の空氣の、日夜劇しく震盪する刺戟とに驅られて、何事をも凝と考へる閑もなく、又落ち付いて手を下す分別も出なかつた。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
宗助は微笑しながら、急忙しい通りを向側へ渡って、今度は時計屋の店を覗き込んだ。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
新らしく世帯を有って、新らしい仕事を始める人に、あり勝ちな急忙しなさと、自分達を包む大都の空気の、日夜|劇しく震盪する刺戟とに駆られて、何事をもじっと考える閑もなく、また落ちついて手を下す分別も出なかった。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
此処には最早旅愁をそゝのかされるやうな物売の呼声を聞くことができぬ、意外に空気は急忙だしいが厳粛なものであつた、私は押し流されるやうにして、この魔宮の正門に達する大理石の舗石の如く、又は、監獄へゆく灰白色の坦道に似た長いプラツトホームを顫へながら急ぎ足に歩いた時の心地は今にも忘れることができない。
— 北原白秋 『新橋』 青空文庫
日が蝕ひ、黄色い陰鬱の光のもとにまだ見も知らぬ寂しい鳥がほろほろと鳴き、曼珠沙華のかげを鼬が急忙しく横ぎるあとから、あの恐ろしい生膽取は忍んで來る。
— 北原白秋 『思ひ出 抒情小曲集』 青空文庫
急行軍の砲車、軍司令官の戦場におもむく朝の行進、砲声を前景にした茶褐色のはげた丘、その急忙の中を、水筒を肩からかけ、ピストルを腰に巻いて、手帳と鉛筆とを手にして飛んで歩いている一文学者の姿をかれはうらやましく思った。
— 田山花袋 『田舎教師』 青空文庫