矢声
やごえ
名詞
標準
文例 · 用例
) と矢声を懸けて、潮を射て駈けるがごとく、水の声が聞きなさるる。
— 泉鏡花 『海の使者』 青空文庫
はずみにかかって、あわれ与五郎、でんぐりかえしを打った時、「や、」と倒れながら、激しい矢声を、掛けるが響くと、宙で撓めて、とんぼを切って、ひらりと翻った。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
思出す、あの……五十段ずつ七折ばかり、繋いで掛け、雲の桟に似た石段を――麓の旅籠屋で、かき玉の椀に、きざみ昆布のつくだ煮か、それはいい、あろう事か、朝酒を煽りつけた勢で、通しの夜汽車で、疲れたのを顧みず――時も八月、極暑に、矢声を掛けて駆昇った事がある。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
表の通りでは砂利をかんで勢いよく駈ける人車の矢声も聞える。
— 寺田寅彦 『枯菊の影』 青空文庫
そして矢声をかけながら漕ぎ始めた。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
朝は元気な船頭衆も夕日が転がりや空矢声。
— 北原白秋 『畑の祭』 青空文庫
わッと言う矢声もろ共、犇めきわめきながら殺到すると、押しのけはねのけ、揉み合いへし合いながら、われ先にと小判の道へ雪崩れかかりました。
— 幽霊を買った退屈男 『旗本退屈男 第十話』 青空文庫
が、二葉亭の文学というは満身に力瘤を入れて大上段に振りかぶる真剣勝負であって、矢声ばかりを壮んにする小手先剣術の見せ物試合でなかったから、美妙や紅葉と共に轡を駢べて小手先きの芸頭を競争するような真似は二葉亭には出来なかった。
— 内田魯庵 『二葉亭四迷の一生』 青空文庫