腹上
ふくじょう
名詞
標準
文例 · 用例
船腹上部の黒ペン塗りが終り、吃水線部のオートライまで吊り足場を下げて、船首から艫へわたる数十組の足場足場の工員は、熟練した動作で、レッド・ペン缶を片手に、迅速な仕事を争っていたのである。
— ――四半自叙伝―― 『忘れ残りの記』 青空文庫
性癖は如何とも爲し難いにせよ、人は成るべく『やはらかみ』と『あたゝかみ』とを有したいものである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
性癖はどうにもならないが、人は成るべく「やはらかみ」と「あたたかみ」とを持ちたいものである。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
夏のさかりに姿を見せないやうな蚊がいま頃漸く出て来たり、赤土の上を匍ふとげとげしい、少しも草といふやはらかみのない草の上のをちこちに、土人の舌のやうな、あくどい真紅な花や、また真青な土人の腕の入墨のやうな花が漸くこの頃見えて来て、それに、きび畑が背たかくかぎりなくつゞくばかり。
— 素木しづ 『雛鳥の夢』 青空文庫
適度なやはらかみと傾きの加減と明るさを湛へた絨毯に似た芝生の感触が、そんな誘惑を私に強ひたのである。
— 牧野信一 『心象風景』 青空文庫
無味乾燥、少しのやはらかみのないものが出来上ったりするのではないかしら。
— 知里幸恵 『日記』 青空文庫
しかもいつまでも童顔の失はれぬ、あふるゝ日光のうちに伸び/\と育つ若木のやうなそのまつすぐな善良さ、顔の明るさ、星の如く澄んで微塵の濁りも見えぬ子供のそれのやうな綺麗な瞳、そのみづ/\しい健康な体の全体に現はれてゐるふつくらとしたやはらかみ。
— ――一名南蛮鋳物師の死 『青銅の基督』 青空文庫