陰雨
いんう
名詞
標準
文例 · 用例
「卜居択其勝、相送宮水※、大淀松陰雨、霑衣分手遅」と云つてゐる。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
先達中の陰雨に引きかへつて此頃は空も浅瀬の如くに澄み渡り秋の涼味は玉のやうにうるはしく訪れてゐます。
— 牧野信一 『〔編輯余話〕』 青空文庫
寺内に棲みける彼の按摩、その業の為にはかゝる寂寥にも慣れたれば、夜出でゝ夜帰るに、こはさといふもの未だ覚え知らず、五月雨の細々たる陰雨の中に一二度は彼燐火をも見たれど、左して怖るゝ心も起らじと言へり。
— 北村透谷 『鬼心非鬼心』 青空文庫
若陰雨時、爲逐風去、亦無所准。
— 桑原隲蔵 『大師の入唐』 青空文庫
そして録音技師は陰雨の中に悶死を遂げ、実に、令嬢の日記こそ、人間生活の真実を描けるもの、かえって推称し得べき正直無比なる人生記録であったが、問題はたださえ世の中が同情と痛惜に沸き立っている真っ最中にこういう人間の真実性を伝えていいかどうかであった。
— 橘外男 『令嬢エミーラの日記』 青空文庫