買い受け
かいうけ
名詞
標準
文例 · 用例
鶴谷の本宅から買い受けて、そしてこの空邸へ、その令室をとじ籠めましょう。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
維新の初に官吏になって、この邸を伊沢鉄三郎の徳安が手から買い受けて、練塀小路の湿地にあった、床の低い、畳の腐った家から移り住んだ。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
「アノ様な恐ろしい、アノ様な荒れ果てた屋敷を何故買うか」など人に怪しまれるが夏蝿いとて、誰にも話さず直ぐに余を呼び附けて一切買い受けの任を引き受けろと云われた。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
買い受けの相談、値段の打ち合せも略ぼ済んでから余は単身で其の家の下検査に出掛けた、土地は都から四十里を隔てた山と川との間で、可なり風景には富んで居るが、何しろ一方ならぬ荒れ様だ、大きな建物の中で目ぼしいのは其の玄関に立って居る古塔で有る。
— 黒岩涙香 『幽霊塔』 青空文庫
これはT市の名誉のために由々敷いことであると思い、吾輩は即座に数万金を積んで、その黄金の鍵を買い受けた。
— 海野十三 『深夜の市長』 青空文庫
宝石商の話すところによると、先日盗まれた首飾りというのは、実は麻布の△△侯爵夫人の所有であったが、ゆえあって宝石商が買い受け、夫人の求めによってその模造品を作って、本物の代わりに納めたということでありました。
— 小酒井不木 『紫外線』 青空文庫
お角としては、自分たちが引受けねばならなかった役廻りを、この芸妓連の一行が買い受けてくれたようにも思われて、本来は、痛快を感じて、多少声援の役廻りでもつとめねばならぬ立場であり、そういう際には、引込んでいる女ではないのですが、この際は、どういうわけか、さほど気が進みませんでした。
— 年魚市の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
そこで、捨値で買い受けた紙屑を、これは大納言様の直筆で候の、このほうは大御所様で候の、これはまた少し御安値ではございますが、当時大阪第一の学者――といったように、広告、ひろめ、つまり宣伝てやつでおどかして、ウンと高く売りやしょう。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫