遶
にょう
名詞
標準
文例 · 用例
女は其意を得て屏風を遶り、奥の方へ去り、主人は立っても居られず其便に坐した。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
併し凝る氣で從事するものは、其の絹紙筆墨を費すや甚大甚夥なるも、畢に繋がれたる馬の一つの柱を遶り、籠められたる猿の六つの窗に忙しげなると同樣に、何の進境をも示さぬものである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
海気は衣を撲って眠り美ならず、夢魂半夜|誰が家をか遶りき。
— 幸田露伴 『突貫紀行』 青空文庫
山の秀ゆるく四方に遶り、まどかに覆ふ秋の天。
— 長塚節 『長塚節歌集 中』 青空文庫
塊まらぬ間に吹かるるときには三つの煙りが三つの輪を描いて、黒塗に蒔絵を散らした筒の周囲を遶る。
— 夏目漱石 『一夜』 青空文庫
あるものは緩く、あるものは疾く遶る。
— 夏目漱石 『一夜』 青空文庫
「※蛸懸不揺、篆煙遶竹梁」と誦して髯ある男も、見ているままで払わんともせぬ。
— 夏目漱石 『一夜』 青空文庫
かくして太織の蒲團を離れたる余は、顫へつゝ窓を開けば、依稀たる細雨は、濃かに糺の森を罩めて、糺の森はわが家を遶りて、わが家の寂然たる十二疊は、われを封じて、余は幾重ともなく寒いものに取り圍まれてゐた。
— 夏目漱石 『京に着ける夕』 青空文庫